今回は、売掛金の入金があった場合について書きたいと思います。慣れていない人が会計ソフトにおんぶにだっこをしていると間違いやすい点も含めて紹介します。
売掛金をしっかり管理することは事業のカナメ
売掛金とは、商品やサービスを提供し代金を後日もらうことになっている場合に、その後日もらうことになっている代金を請求する権利(売買代金債権)です。
商品などをいくらたくさん売り上げても、代金をしっかり回収しなくては商売は成り立ちません。いずれ資金ショートをおこしてしまいます。売掛金が現時点でいくらあり、どの得意先からもしかるべき時期にしかるべき額の入金があるのか。これらのことを把握することは事業成功のカナメの一つです。きちんと入金がされていないようであれば督促したりなどの対応を考えなければなりません。
売掛金の大切さにかんがみ、売掛金勘定の記帳(会計ソフトでの仕訳入力)をしっかりできるようにしておきましょう。
「先月7月某日に売り上げた商品代金100,000円の入金が、今月8月25日に普通預金口座にあった」という場合の仕訳は下記のようになります。
日付 | <借方>(円) | <貸方>(円) |
8月25日 | 預金 100,000 | 売掛金 100,000 |
このように、売掛金の入金の際の記帳については、通常の場合であれば入金額をそのまま記帳すればよいのでそれほど難しくありません。
入金額が売掛金の額よりも少なくなる場合も
注意しておきたい場合もあります。売掛金の入金があった際に、なにがしかの経費を差し引かれて入金されているような場合です。下記に具体例を示しました。このような場合には、売掛金の金額と、後日入金があった場合の実際の入金額とが一致しません。売掛金の金額より、実際の入金額が少なくなるのです。
ケース | 売掛金の金額(円) | 入金があった場合の実際の入金額(円) |
①商品の売上代金である売掛金が100,000円であった。銀行振込により代金をもらうことになっていた。振込手数料432円は当社の負担であった。 | 100,000 | 99,568 |
②クレジットカード払いで商品を100,000円で売り上げた。このクレジット会社では、売上手数料は商品代金の3%であり(3,000円)、売上代金から差し引くことになっていた。 | 100,000 | 97,000 |
③ショッピグサイトサイトで商品を100,000円で売り上げた。このサイトのシステム利用料は商品代金の10%(10,000円)であり、売上代金から差し引くことになっていた。 | 100,000 | 90,000 |
上記はご自分で記帳を始めたばかりの方などが間違いやすいケースです。
どう間違うのでしょう。入金があった場合に預金通帳に記載されていた金額をみて、その金額分だけ売掛金を減らす処理をしてしまうのようなパターンです。
上記の①でいえば入金時に、預金通帳に99,568円の入金額が載りますので、その金額をみて下記のような記帳(仕訳)をしてしまうことです。入金日は、仮に8月25日としましょう。
日付 | <借方>(円) | <貸方>(円) |
8月25日 | 預金 99,568 | 売掛金 99,568 |
これだけだと、得意先への売掛金の残高がまだ432円残っていることになってしまいます。売掛金100,000円はすべて払ってもらったのに、です。これはおかしいですね。売掛金を管理している売掛帳の金額と合わなくなってしまいます。
当社負担の振込手数料432円も、決算書のどこにも表れないことにもなります。
入金額について確認を
上記①、②、③のケースについて入金があった場合の正しい記帳の仕方を示せば、下記のようになります。
貸方は売掛金の減少した金額100,000円が出ています。借方には預金口座の入金額だけでなく、支払手数料などの当社負担の経費の額が出ています。これらの点を注目していただければと思います。
(勘定科目名はあくまでも参考のためです。会社によって異なります)
<①について>
日付 | <借方>(円) | <貸方>(円) |
8月25日 | 預金 99,568
支払手数料 432 |
売掛金 100,000 |
<②について>
日付 | <借方>(円) | <貸方>(円) |
8月25日 | 預金 97,000
クレジット手数料 3,000 |
売掛金 100,000 |
<③について>
日付 | <借方>(円) | <貸方>(円) |
8月25日 | 預金 90,000
システム利用料 10,000 |
売掛金 100,000 |
簡単に説明しましたように、入金時に、その実際の入金額が売掛金の金額より少ないことがよくあります。それが要チェックポイントです。
正しく記帳するためには、預金通帳の金額のみを鵜呑みにしてはなりません。代金の入金について得意先とどのような約束(契約)となっていたかなどを、確認するようにしましょう。
また、当社が発行した請求書、得意先が発行した支払明細書のような書類があれば、それらの金額と入金額とを突き合わせながら記帳していきましょう。
そして売掛金勘定の残高と、売掛帳の残高とが一致するようにしていきます。