今回は相続人のお話。相続税の申告をする際はだれが相続人であるのかを把握することが欠かせません。また生前に相続・相続税対策を考える際にも将来的に相続人となりうる人に関する情報が必要となります。
なお、相続人を正確に把握するには、被相続人の出生から死亡までの一連の戸籍を取り寄せる必要があります。その方法については別の機会に譲りたいと思います。
相続人の範囲と法定相続分
法定相続人
相続人の範囲は、民法により以下のように定められています(法定相続人)。
- 被相続人(故人)の配偶者は常に相続人となります。
- 前記と並行して、被相続人に子がいる場合は、子は第一順位の相続人となります。
- 子がいない場合は被相続人の親が第二順位の相続人となります。
- 親もいない場合は被相続人の兄弟姉妹が第三順位の相続人となります。
基本は以上のようなことですが、下記のような規定もあります。
- 被相続人の死亡以前に、相続人となるはずだった子が死亡していた場合
- その子の直系卑属(つまり、被相続人の孫)が代わって相続人となります(代襲相続)。孫もすでに死亡していた場合は、ひ孫が代襲相続します(再代襲)。
- 被相続人の死亡以前に、相続人となるはずだった兄弟姉妹が死亡していた場合
- その兄弟姉妹の直系卑属(つまり、被相続人の甥や姪)が代わって相続人となります。再代襲はありません。
- 「相続欠格」に該当する場合や「相続人の排除」が認められた場合
- その者は相続人の資格を失います。
- 相続欠格とは、親を殺したなど、法定相続人に相続を認めることが相当でない場合を指します。
- 相続人の排除とは、被相続人を虐待したり著しい非行があった場合に、被相続人の請求に基づいて推定相続人に相続をさせないことを言います。
- その者は相続人の資格を失います。
法定相続分
また各相続人がどれだけ遺産を取得できるかも民法により定められています(法定相続分)。
- 配偶者と子が相続人である場合・・・配偶者1/2、子1/2
- 配偶者と親が相続人である場合・・・配偶者2/3、親1/3
- 配偶者と兄弟姉妹が相続人である場合・・・配偶者3/4、兄弟姉妹1/4
遺言で相続分が指定されている場合は、それが優先されます(指定相続分)。
相続税の計算で重要な要素に
こうして把握される相続人の数や法定相続分は相続税を計算する上で重要な要素となります。いくつか例をあげます。
◎基礎控除額
まず遺産に係る基礎控除額。遺産が相続税の申告の要不要を決めるラインです。それは、次のような算式で決まります。
3,000万円 + (600万円×法定相続人の数)
遺産がこの金額以下の場合は、相続税の申告は不要です。
なお、上記の法定相続人の数については、相続放棄した者がいた場合は、その相続放棄がなかったものとしてカウントします。また、被相続人に養子がある場合で、被相続人に実子がいるときは養子の数は1人としてカウント。被相続人に養子がある場合で、被相続人に実子がいないときは養子の数は2人までを限度としてカウントします。以下同様です。
◎生命保険金、退職手当金の非課税金額
故人が生前に保険料を支払っていた生命保険の保険金を遺族などが受け取ったときは、相続税の課税対象となりますが、次の金額までは非課税です。
500万円×法定相続人の数
会社勤めなどをしていた故人に支給されるべき退職手当金等を遺族などが受け取ったときも、相続税の課税対象となりますが、次の金額までは非課税です。
500万円×法定相続人の数
◎相続税の総額の計算
さらに、相続税の総額は、遺産を法定相続人が法定相続分に応じて取得したものとして計算します。そしてその総額を各人の実際の取得金額に応じて按分して各人ごとの相続税額を算出していきます。
また、財産を取得した者が、被相続人の「父母・子・配偶者」以外の者である場合は、相続税額を20%加算します。
生前のシミュレーションにおいても
生前の相続税対策の場合も、万一相続があったとしたらだれが相続人になりうるのかを把握することが必要となるでしょう。相続税シミュレーション(計算)をするときにも、上記のような事項を考慮することとなるからです。