修正申告において、小規模宅地等の特例は適用できるか

タイトルのとおりですが、今回は、「相続税の修正申告において小規模宅地等の特例を適用できるか」という問題に関して書きます。一般の方にはあまり興味がないテーマかもしれません。また、あとでも述べるようにこの問題が問われるのはかなり稀な場合ですので、同業者の方も関心がないかもしれません。よろしければお読み下さい。

小規模宅地等の特例とは

最初に、一般の方のために、「小規模宅地等の特例」について簡単に説明します。この特例は、相続税の申告の中でも最重要の特例の一つです。被相続人等の事業や居住のために使っていた宅地等について、相続税での評価額を80%又は50%の割合で減額できるというもので、相続税額を大きく減らす効果があります。

このような特例が設けられている理由としては、残った遺族の生活基盤の維持を図ることなどが挙げられています。

通常、この特例を適用できる場合は、抜かることなく、この特例を適用して期限までに相続税の申告をしています。

ところが今回の問題は、通常のケースと違い、「最初の申告のときには特例を適用していなかったが、修正申告のときに特例を適用できるのか」ということです。

レアケースではあるが

このような問題が問われるケースは実務上はかなり少ないと思います。しかし、かなり稀少ですが、この問題が問われるケースがありえます。すなわち、特例の適用ができるにも関わらず、何らかの事情により特例を適用せずに(期限内に)最初の相続税申告をした、その後税務調査で相続財産の計上漏れを指摘され修正申告せざるをえなくなった、このときに少しでも追加納付税額を減らすために修正申告の段階で特例を適用したい――。

そのようなケースを想定してみて下さい。

「できない」と断言する方も

この問題に関して、同業者のホームページ等で「小規模宅地等の特例は、租税特別措置法で定められた特例であり、<当初申告要件>がある。したがって、修正申告時に初めてこの特例を適用しようとしても適用できない」という趣旨が書かれているのをいくつか、みかけました。

たしかに、租税特別措置法の特例と言えばすぐに「当初申告要件あり」というのが頭に浮かびます。そこで、一見すると、この問題にすぐに「ノー」と答えてしまいそうです。

結論は「できる」。根拠は税法。

しかしながら、「適用できます」というのが結論です。(限度面積要件を満たしていることや、相続税の申告期限までに遺産分割が終了していることなど、特例適用のための他の要件を満たしていることが前提です)

根拠は、租税特別措置法の条文そのものにあります。

(租税特別措置法第69条の4第6項)
第1項の規定は、同項の規定の適用を受けようとする者の当該相続又は遺贈に係る相続税法第27条又は第29条の規定による申告書(これらの申告書に係る期限後申告書及びこれらの申告書に係る修正申告書を含む。次項において「相続税の申告書」という。)に第1項のに規定の適用を受けようとする旨を記載し、同項の規定による計算に関する明細書その他の財務省令で定める書類の添付がある場合に限り、適用する。

これは、小規模宅地等の特例の<申告要件>を定めた条文です。すなわち、「第1項の規定」というのは小規模宅地等の特例のことであり、この特例は、「相続税の申告書」に特例の適用を受けようとする旨を記載し、定められた明細書等の書類を添付している場合に限り、適用されます。

そして、条文にあるとおり、「相続税の申告書」には、相続税の(期限内)申告書及び期限後申告書に係る「修正申告書」が含まれています。

というわけで、「小規模宅地等の特例は、修正申告において適用できる」という結論となります。

税法そのものをしっかり確認する

「この特例は当初申告要件があるから、修正申告では適用できない」という見解を他ならぬ同業者の方がのべてしまうのは、条文をきちんと読んでいないか、思い違いというものでしょう。

「当初申告要件」云々の話は、「更正の請求」との関係で問題となることですので、今回の問題とは関係ありません。今回は(レアケースですが)あくまでも修正申告の場合です(特例を適用しても、さらに追加納税が必要となるケースです)。

「当初申告要件」という言葉に惑わされず、根拠となる税法(今回の場合は、租税特別措置法)をしっかり確認することが大切だと考える次第です。

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