大切な財産を引き継ぐために。相続税のキホンを知る

「大切な財産をあとに残る家族にできるだけ多く残したい」――多くの人がそのように思うことでしょう。生涯にわたって苦労して築いてきた財産です。それをできるだけ多く子や孫などに引き継ぐ。そのためには相続や相続税についてよく知っていただくことが大切だと考えます。

今回は相続税のキホンを簡潔に説明します。個々の論点については別途機会を設けて掘り下げていきたいと思います。

相続税とは

人が亡くなると、その財産をその遺族などが取得します。相続税は、故人(被相続人)の財産を取得した遺族など(相続人等)に対して、その取得した財産の価額をもとに課される税金です。

相続税が設けられている趣旨は、一般的に、故人が生前に蓄積してきた財産を相続時点でいったん清算しておくためとか、一部の人(家系)に富が過度に集中するのを防ぐためなどと言われています。

相続税を納めなければならない人は

相続や遺贈(死因贈与を含む)により財産を取得した個人が相続税の納税義務者とされています。

遺贈とは、遺言により人に財産を譲ることです。死因贈与は、「贈与者の死亡によって効力を生ずる贈与」(「自分が死んだらあなたに財産をあげる」という契約にもとづく贈与)のことです。

こう書くと、相続や遺贈により財産を取得したら、必ず相続税を納めなければならないと思われるかもしれません。しかし、後述のように、総遺産額が基礎控除額以下の場合には、相続税を納める必要はありません。

相続税の対象となる財産は

本来の相続財産

相続税法の対象とする財産は、被相続人が持っていた財産(本来の相続財産)で、経済的価値のあるもの全てです。具体的には、現金預金、有価証券、不動産、自動車、骨董品、宝石などであり、金銭に見積もることができるものであれば、相続税の対象となります。

みなし相続財産

代表的なものは、被相続人の死亡により相続人等が受け取る生命保険金で、被相続人が生前に保険料を負担していた場合。相続税法ではこの場合の生命保険金を「みなし相続財産」として課税の対象とします。

この場合の生命保険金は、本来の相続財産ではありません。しかし、実質的に相続や遺贈により相続人等が財産を取得したことと同じとみなせると考え、課税されてしまいます。

遺産に係る基礎控除とは

相続税を計算するに当たって、相続財産の価額の合計額から、被相続人の債務(借金)や葬式費用などを差し引きます。この差引後の金額(総遺産額)が、下記の金額以下である場合には、相続税がかかりません。これを「遺産に係る基礎控除」と言います。

3,000万円+(600万円×法定相続人の数)

たとえば、相続人が配偶者、長男、長女の合計3人だった場合は、遺産に係る基礎控除額は次のようになります。

3,000万円+(600万円×3人)=4,800万円

すなわち、総遺産額が4,800万円までであれば相続税はかかりませんが、4,800万円を超える場合は原則として相続税がかかることになります。

各相続人にはいくらの相続税がかかるか

相続税の総額の計算

まず総遺産額から、遺産に係る基礎控除額を差し引きます。その金額を、各相続人が民法の法定相続分に従って相続したものとした場合の各取得金額を下記の表にあてはめて税額を算出します。算出した税額の合計額を相続税の総額といいます。

各法定相続人の取得金額 税率(%) 控除額(万円)
~1,000万円 10
~3,000万円 15 50
~5,000万円 20 200
~1億円 30 700
~2億円 40 1,700
~3億円 45 2,700
~6億円 50 4,200
6億円超 55 7,200

具体例で考えてみましょう。

相続人が配偶者、長男、長女の合計3人で、総遺産額が1億5,000万円だった場合。

  • 法定相続分: 配偶者(1/2)、長男(1/4)、長女(1/4)
  • 遺産に係る基礎控除額: 4,800万円
  • 課税遺産総額:1億5,000万円(総遺産額)-4,800万円(基礎控除額)=1億200万円
  • 各人の法定相続分に応じた取得価額:
    • 配偶者: 1億200万円×(1/2)=5,100万円
    • 長男:  1億200万円×(1/4)=2,550万円
    • 長女:  1億200万円×(1/4)=2,550万円
  • 各人の算出税額(上記に表に当てはめる)
    • 配偶者: 5,100万円×30% -700万円 =830万円
    • 長男:  2,550万円×15% -50万円 =332.5万円
    • 長女:  2,550万円×15% -50万円 =332.5万円
  • 相続税の総額:
    • 830万円 +332.5万円 +332.5万円 =1,495万円

各相続人等の相続税額

次に実際の財産の取得額によって、上記の相続税の総額を各相続人等にあん分計算します。

上記の例で、実際の財産の取得額が法定相続分どおりであれば、各相続人等の相続税額は次のようになります。

  • 配偶者:1,495万円×(1/2)=747万5,000円
  • 長男:1,495万円×(1/4)=373万7,500円
  • 長女:1,495万円×(1/4)=373万7,500円

さらにいくつかの調整(加算・控除)をおこなって、実際の各人の納付額を計算します。配偶者は、税額軽減の措置があるのでこの場合の納付額は最終的にゼロ円になります。

相続税の申告・納付はいつまでに

通常の場合は、亡くなった日の翌日から10ヶ月以内に相続税の申告書を提出します。税金の納付の期限も同じです。

申告書の提出先は、個人の死亡当時の住所地を所轄する税務署長です。

※以上は、相続税のキホンを解説するために条件を簡略化しています。ご留意下さい。

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