「なぜうちの会社に税務調査が?」 調査理由の開示に関して

「なぜうちの会社が税務調査の対象になったのだろう?」 税務調査をこれから受ける経営者ならそのように思う方も少なくないと思います。今回は調査理由の開示について考えてみます。

「調査の目的」だけ言われても・・・

別記事で触れたように税務署側が事前通知する項目の一つとして「調査の目的」があります(国税通則法第74条の9)。しかしながら、これについてはあまり期待できません。

「調査の目的」の事前通知について、法令の規定はとてもあっさりしている印象です。

すなわち、納税申告書の記載内容の確認又は納税申告書の提出がない場合における納税義務の有無の確認その他これらに類する調査の目的を通知する、と規定しているだけです(国税通則法施行令第30条の4第2項)。

税務署側もこの条文を盾にしているのか、調査理由の開示に関しては後ろ向きの姿勢。

結局、税務署側からの事前通知では「申告書の記載内容の確認をしたいのですが・・・」などといったシンプルな連絡しかこない場合がほとんどのようです。

しかしそれだけでは、「なぜうちの会社が?」との疑問は解消しないでしょう。

納税者の協力を得るためにも

税務調査は犯罪捜査ではありませんし、納税者の理解と協力を得て進めるものです。

なにより税務調査は「調査について必要があるとき」に行うことができるとされています(国税通則法第74条の2)。

この「必要があるとき」というのはどういう意味でしょう。

それは、「調査の目的、調査すべき事項、申請、申告の体裁内容、帳簿等の記入保存状況、相手方の事業の形態等諸般の具体的事情にかんがみ、客観的な必要性があると判断される場合」だと解されています(最高裁昭和48年7月10日決定)。

つまり税務調査を実施するには客観的な必要性が求められるということ。税務署側が恣意的におこなってはならないわけです。

であるならば、税務署側はその必要性(調査理由)を開示するほうがよいと、考えます。そのほうが税務調査に対する納税者の理解や協力を得やすくなるのではないでしょうか。

聞く権利はある

税務調査がある際には、「なぜうちの会社が?」という疑問を率直に聞いてみることは大切だと思います。税務署側が答えるかどうかは別として、納税者側には質問する権利自体はあるでしょう。

全国で多くの会社がそのような質問を発することになれば、調査理由をより具体的に開示する方向へ税務署側の認識も変わり、事務運営指針の改善、ひいては法改正につながる可能性もあるのではないでしょうか。

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